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〒003-0024 北海道札幌市白石区本郷通8丁目南2-8 2階
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無駄遣いの経済学
お久しぶりです。
今回のブログは愚痴&楽しくもないので、読まない方が良いのかもしれません。
ペダルバルのある本郷商店街というのは変人の集まりなんです。
先日、お祭りの会議をしているときに以下のようなやり取りがありました。
要素だけを書くので細部のニュアンスや言い回しは異なります。
わかりやすくしているので。あしからず。
小林「人件費に関して、就労支援施設の人を雇うのに時給1,000円は高い。見積もりを取るべきだ。時給1,000円で15人雇うというなら、2日で24万円になる。これは差別ではなく区別だ」
A氏「例年時給1,000円だった。障害者に関係なく、同一労働同一賃金という考えを私は持っている。障害者だから、健常者だからで時給を差別しない」
B氏「費用は安くした方が良いというものではない。地域貢献や地域を代表して率先してお金を使っていくべきだ。この場合、時給は1,000円にするべきだ」
小林「時給を1,000円にしたところで、施設が上前をはねるのであれば意味はないのでは?価値のない支出では?」
A氏「確かに支払った賃金のすべては働いた人にいきわたらないかもしれない。しかしそれをピンハネというのは違和感がある。
私の商売もだが、手数料などで儲けることは悪いことではない。むしろ施設側に旨味をもたせないとならない。施設側もまたお金が必要なのだから」
続けてA氏「ここは時間もないので私の独断で決めたい。時給は1,000円だ」
と、まぁこんな感じでした。
おかしいところはたくさんあるとして、僕がこのやり取りから考えるきっかけとなったのが題名にある『無駄遣いする政治家の経済学』です。
どうでしょうか。
政治家が10億円もの税金を使ってハコモノを建設しました。
そしてその受注業者は政治家が指名して決まりました。
さらに後になって精査すると、ハコモノの建設費用は5億円で済むことがわかりました。
10億円という費用は、政治家が勝手に決めたものでした。
受注業者には建設費として10億円が渡りました。
大ニュースです。
国民は怒るでしょう。政治家は失脚するでしょう。
規模は違えども、先に挙げた商店街での議論と何が違うのでしょうか。
これは非常に面白くて、「なぜこうなるのだろうか。無駄遣いは削減すべきなのはみんな理解しているはずなのに」という疑問を私に授けてくれたのです。
で、考えた結果、3つの経済学あるいは心理学の要因から説明できました。
まず1つが「人間は現状からの変化を嫌う」という性質です。
これは言い換えれば、デフォルトの設定を変更することすらできないということです。
あなたのスマホの料金プラン、見直すと安くなる場合があるのにも関わらずなんだかんだで昔のプランを引き継いでませんか?
「解約しないとなぁ」と思っているサブスク、また今月も契約延長してませんか? 行かなくなったジムに会費を払い続けてませんか?
私も例にもれず、解約しないとならないサービスを放っておいています。
このように人間というのは一度決めたものを見直すことが不得意なのです。
現状変更のコストはすごく大きいものだと認識してしまうのです。
これを先の商店街の会議に戻せば「例年は時給1,000円だった」となるのです。
適正な時給を求めること、例年時給1,000円払っていた施設に対して値下げの見積もりをさせることに大きな心理的障壁が存在するのです。
「そんな面倒なことをするくらいなら時給1,000円払いたい。そもそもオレのお金じゃねーし」
そんなところでしょうかね。
そう、「そもそもオレのお金じゃねーし」なんです。次の理由は。
そんな感じで、2つ目の要因は「割り勘による責任の欠如」です。
なぜ税金の無駄遣いが生まれるのか。なぜ組合費の無駄遣いが生まれるのか。
それはつまるところそのお金は「いくら使おうが自分の懐は痛まない」からなのです。
政治家だって納税者ですし、商店街の理事連中だって組合費を納めています。
しかしそれは全体に比べれば無視できるほど小さい金額です。
時給1,000円×8時間×15人×2日=24万円
あるいはハコモノの建設費10億円の中に自分の納めた組合費や税金はいくらなのでしょうか。
99%以上は他人の金なはずです。
他人の金は許可の必要もなく好き勝手使えるなら、節約するインセンティブはなくなります。
もしあなたが10人で焼き肉屋に行ったとしたら、まず頼むべきは1万円のハイパー特上ロースです。
そして他人に食べられないうちにできる限りの量を食べるのです。
1万円のステーキも割り勘になるのですから、1,000円で食べられることになります。
言い換えれば、代金の90%を他人が払ってくれるのです。
それはもう、タダみたいなものです。お会計金額にあなたが負う責任はほとんどありません。
それなら高い肉をバンバン頼むべきなのです。
でももしあなたが自分のお金で焼き肉を食べにいくなら、最低の価格での最高のおいしさを実現するためにメニューにある肉の写真と価格を吟味することでしょう。
人間って、自分の責任になると人が変わるものです。
経費を使いまくっていたあの先輩も、管理職になった途端に経費申請にやたら厳しくなるものです。
人からもらった金で贅沢するのも、会社の金を横領して贅沢するのも、一部分はこの心理が働いているのかと思います。
自分の金じゃないと気づいた瞬間、人間は浪費家になるのです。
以上から
・前例があるのなら変更したくない。余計なことはしたくない
・そもそも自分の金じゃないからどうでもいい
ということで無駄遣いは説明できるかと思います。
例に出した政治家の無駄遣いに関しては、これに追加して受益者が存在するためもうちょい複雑かもしれませんが。
まぁそこに関しても「お金くれる太っ腹おじさん」的な感じなんでしょうね。
そしてもう一つ、忘れてはならないのが「無駄遣いを止める人はいないのか」です。
誰が見ても無駄遣いなら「いやいや、それダメやん!」という声が上がってもおかしくないと思います。
ただしかしその声が上がることはあまりないようです。
なぜか。
それは「決まったことを守っているだけ」という認識の人間ばかりだからです。
ナチスドイツでホロコーストに深く関わった人物で、アイヒマンという男がいました。
戦後になって捕らえられ、裁判にかけられた際に彼は衝撃の主張をします。
「私は無罪だ」と。
理由は「私は軍人として上官の命令を遂行したのみであり、虐殺を行った認識はない」というものでした。
全世界中が「嘘やん!往生際悪すぎだろ!」とブチギレている中、この主張に興味を持った心理学者がいました。
ミルグラム氏はアイヒマンの主張を確かめるためにある実験を行います。
それは、壁の向こうの人間に電気ショックを与えるというものでした。
電気ショックを与える人間をAとします。
Aは指示役のBによって命令される立場です。
しかしAには事前にBの命令を拒否できることも伝えてあります。
電気ショックのボタンには5段階が表示され、4つ目には「命の危険」と書かれています。
電気ショックを与えている人は見えませんが、声は聞こえてくる状況です。
さて、最初の電気ショックを行います。壁の向こうから悲鳴が聞こえてきます。
それでもBはやめません。「もっと強く。5を押せ」と命令します。
どうなったのか。
ほとんどのAが、最強の5のボタンを押しました。
拒否する様子もなく、命の危険の次のボタンを押したのです。
実験が終わったあと、A役の被験者にアンケートを取りました。
最大の5の電気ショックを与えたことに関しては
「命令だったから仕方がない」
「壁の向こうの人間は電気ショックを与えられる理由があったのだろう」
「私は命令に忠実に従った。むしろ評価されるべきだ」
などの回答が得られました。
このように人間は自分より立場の上の人間の指示や決定に逆らえないのです。
悲しいね。
この傾向があるから、むしろドラマや映画では反骨心のある主人公が人気になるのです。
話を戻すと、無駄遣いに異議を唱えない人間は、むしろとても真実の人間の姿を現しているのです。
「決まったことだから」
「私が考えることではないから」
「無駄遣いかもしれないけど、これで良いと指示をうけているから」
などなど。
人間はそんな感じなので、圧倒的なカリスマや権力のもとでガラパゴス化したコニュニティーにおいて、一般常識に照らして明らかに間違った行動をとってしまうのです。
あぁ怖い。
こうして無駄遣いはなくならず、無駄遣いをやめようと叫ぶ身内も生まれないのです。
まとめると
・例年通りだからと現状の見直しを拒否し
・お金に責任のない人間が決めた無駄遣いを
・「あの人が決めたことだから」と周囲も疑問を持たずに支持する
こんな感じで税金や組織の資金の無駄遣いが発生します。
終わってるぜ。
でも仕方ないのです。我々が人間である以上、逃れられない運命なのです。
こうやって今日も日本のあちこちで無駄遣いが生まれ、そして誰も疑問をもつこともなく処理されていくのでしょう。
もしもみなさんが、みなさんの所属する組織において明らかな無駄遣いや意思決定の間違いがあった場合、どうしてそうなってしまうのかを考えてみてください。
人間って、愚かな生き物なのですよ。
経済学、大好き。
長々と失礼しました。
次回からはまた不毛な文章に戻る予定です。未定だけど。
ちなみにこのブログは約3700文字でした。長い!!
◆◇————————————————————◇◆ ペダルバル 電話番号:090-1642-6920 〒003-0024 北海道札幌市白石区本郷通8丁目南2-8 2階 営業時間 / 19:00~26:00 定休日 / 日曜・月曜 ◆◇————————————————————◇◆
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24/11/22
24/06/26
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お久しぶりです。
今回のブログは愚痴&楽しくもないので、読まない方が良いのかもしれません。
ペダルバルのある本郷商店街というのは変人の集まりなんです。
先日、お祭りの会議をしているときに以下のようなやり取りがありました。
要素だけを書くので細部のニュアンスや言い回しは異なります。
わかりやすくしているので。あしからず。
小林「人件費に関して、就労支援施設の人を雇うのに時給1,000円は高い。見積もりを取るべきだ。時給1,000円で15人雇うというなら、2日で24万円になる。これは差別ではなく区別だ」
A氏「例年時給1,000円だった。障害者に関係なく、同一労働同一賃金という考えを私は持っている。障害者だから、健常者だからで時給を差別しない」
B氏「費用は安くした方が良いというものではない。地域貢献や地域を代表して率先してお金を使っていくべきだ。この場合、時給は1,000円にするべきだ」
小林「時給を1,000円にしたところで、施設が上前をはねるのであれば意味はないのでは?価値のない支出では?」
A氏「確かに支払った賃金のすべては働いた人にいきわたらないかもしれない。しかしそれをピンハネというのは違和感がある。
私の商売もだが、手数料などで儲けることは悪いことではない。むしろ施設側に旨味をもたせないとならない。施設側もまたお金が必要なのだから」
続けてA氏「ここは時間もないので私の独断で決めたい。時給は1,000円だ」
と、まぁこんな感じでした。
おかしいところはたくさんあるとして、僕がこのやり取りから考えるきっかけとなったのが題名にある『無駄遣いする政治家の経済学』です。
どうでしょうか。
政治家が10億円もの税金を使ってハコモノを建設しました。
そしてその受注業者は政治家が指名して決まりました。
さらに後になって精査すると、ハコモノの建設費用は5億円で済むことがわかりました。
10億円という費用は、政治家が勝手に決めたものでした。
受注業者には建設費として10億円が渡りました。
大ニュースです。
国民は怒るでしょう。政治家は失脚するでしょう。
規模は違えども、先に挙げた商店街での議論と何が違うのでしょうか。
これは非常に面白くて、「なぜこうなるのだろうか。無駄遣いは削減すべきなのはみんな理解しているはずなのに」という疑問を私に授けてくれたのです。
で、考えた結果、3つの経済学あるいは心理学の要因から説明できました。
まず1つが「人間は現状からの変化を嫌う」という性質です。
これは言い換えれば、デフォルトの設定を変更することすらできないということです。
あなたのスマホの料金プラン、見直すと安くなる場合があるのにも関わらずなんだかんだで昔のプランを引き継いでませんか?
「解約しないとなぁ」と思っているサブスク、また今月も契約延長してませんか?
行かなくなったジムに会費を払い続けてませんか?
私も例にもれず、解約しないとならないサービスを放っておいています。
このように人間というのは一度決めたものを見直すことが不得意なのです。
現状変更のコストはすごく大きいものだと認識してしまうのです。
これを先の商店街の会議に戻せば「例年は時給1,000円だった」となるのです。
適正な時給を求めること、例年時給1,000円払っていた施設に対して値下げの見積もりをさせることに大きな心理的障壁が存在するのです。
「そんな面倒なことをするくらいなら時給1,000円払いたい。そもそもオレのお金じゃねーし」
そんなところでしょうかね。
そう、「そもそもオレのお金じゃねーし」なんです。次の理由は。
そんな感じで、2つ目の要因は「割り勘による責任の欠如」です。
なぜ税金の無駄遣いが生まれるのか。なぜ組合費の無駄遣いが生まれるのか。
それはつまるところそのお金は「いくら使おうが自分の懐は痛まない」からなのです。
政治家だって納税者ですし、商店街の理事連中だって組合費を納めています。
しかしそれは全体に比べれば無視できるほど小さい金額です。
時給1,000円×8時間×15人×2日=24万円
あるいはハコモノの建設費10億円の中に自分の納めた組合費や税金はいくらなのでしょうか。
99%以上は他人の金なはずです。
他人の金は許可の必要もなく好き勝手使えるなら、節約するインセンティブはなくなります。
もしあなたが10人で焼き肉屋に行ったとしたら、まず頼むべきは1万円のハイパー特上ロースです。
そして他人に食べられないうちにできる限りの量を食べるのです。
1万円のステーキも割り勘になるのですから、1,000円で食べられることになります。
言い換えれば、代金の90%を他人が払ってくれるのです。
それはもう、タダみたいなものです。お会計金額にあなたが負う責任はほとんどありません。
それなら高い肉をバンバン頼むべきなのです。
でももしあなたが自分のお金で焼き肉を食べにいくなら、最低の価格での最高のおいしさを実現するためにメニューにある肉の写真と価格を吟味することでしょう。
人間って、自分の責任になると人が変わるものです。
経費を使いまくっていたあの先輩も、管理職になった途端に経費申請にやたら厳しくなるものです。
人からもらった金で贅沢するのも、会社の金を横領して贅沢するのも、一部分はこの心理が働いているのかと思います。
自分の金じゃないと気づいた瞬間、人間は浪費家になるのです。
以上から
・前例があるのなら変更したくない。余計なことはしたくない
・そもそも自分の金じゃないからどうでもいい
ということで無駄遣いは説明できるかと思います。
例に出した政治家の無駄遣いに関しては、これに追加して受益者が存在するためもうちょい複雑かもしれませんが。
まぁそこに関しても「お金くれる太っ腹おじさん」的な感じなんでしょうね。
そしてもう一つ、忘れてはならないのが「無駄遣いを止める人はいないのか」です。
誰が見ても無駄遣いなら「いやいや、それダメやん!」という声が上がってもおかしくないと思います。
ただしかしその声が上がることはあまりないようです。
なぜか。
それは「決まったことを守っているだけ」という認識の人間ばかりだからです。
ナチスドイツでホロコーストに深く関わった人物で、アイヒマンという男がいました。
戦後になって捕らえられ、裁判にかけられた際に彼は衝撃の主張をします。
「私は無罪だ」と。
理由は「私は軍人として上官の命令を遂行したのみであり、虐殺を行った認識はない」というものでした。
全世界中が「嘘やん!往生際悪すぎだろ!」とブチギレている中、この主張に興味を持った心理学者がいました。
ミルグラム氏はアイヒマンの主張を確かめるためにある実験を行います。
それは、壁の向こうの人間に電気ショックを与えるというものでした。
電気ショックを与える人間をAとします。
Aは指示役のBによって命令される立場です。
しかしAには事前にBの命令を拒否できることも伝えてあります。
電気ショックのボタンには5段階が表示され、4つ目には「命の危険」と書かれています。
電気ショックを与えている人は見えませんが、声は聞こえてくる状況です。
さて、最初の電気ショックを行います。壁の向こうから悲鳴が聞こえてきます。
それでもBはやめません。「もっと強く。5を押せ」と命令します。
どうなったのか。
ほとんどのAが、最強の5のボタンを押しました。
拒否する様子もなく、命の危険の次のボタンを押したのです。
実験が終わったあと、A役の被験者にアンケートを取りました。
最大の5の電気ショックを与えたことに関しては
「命令だったから仕方がない」
「壁の向こうの人間は電気ショックを与えられる理由があったのだろう」
「私は命令に忠実に従った。むしろ評価されるべきだ」
などの回答が得られました。
このように人間は自分より立場の上の人間の指示や決定に逆らえないのです。
悲しいね。
この傾向があるから、むしろドラマや映画では反骨心のある主人公が人気になるのです。
話を戻すと、無駄遣いに異議を唱えない人間は、むしろとても真実の人間の姿を現しているのです。
「決まったことだから」
「私が考えることではないから」
「無駄遣いかもしれないけど、これで良いと指示をうけているから」
などなど。
人間はそんな感じなので、圧倒的なカリスマや権力のもとでガラパゴス化したコニュニティーにおいて、一般常識に照らして明らかに間違った行動をとってしまうのです。
あぁ怖い。
こうして無駄遣いはなくならず、無駄遣いをやめようと叫ぶ身内も生まれないのです。
まとめると
・例年通りだからと現状の見直しを拒否し
・お金に責任のない人間が決めた無駄遣いを
・「あの人が決めたことだから」と周囲も疑問を持たずに支持する
こんな感じで税金や組織の資金の無駄遣いが発生します。
終わってるぜ。
でも仕方ないのです。我々が人間である以上、逃れられない運命なのです。
こうやって今日も日本のあちこちで無駄遣いが生まれ、そして誰も疑問をもつこともなく処理されていくのでしょう。
もしもみなさんが、みなさんの所属する組織において明らかな無駄遣いや意思決定の間違いがあった場合、どうしてそうなってしまうのかを考えてみてください。
人間って、愚かな生き物なのですよ。
経済学、大好き。
長々と失礼しました。
次回からはまた不毛な文章に戻る予定です。未定だけど。
ちなみにこのブログは約3700文字でした。長い!!
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