パンダのうんこはいい匂い

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パンダのうんこはいい匂い

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2022/09/01 パンダのうんこはいい匂い

藤岡みなみのエッセイ集を読んだ。

 

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とても良くて、気持ちがあふれてきたのでブログに書こうと思う。

 

「こんなブログ、誰も読んでねぇよ」なんて思って書いているのだけど、たまにまかり間違って新規で来てくれたお客さんに「ブログ、読みましたよ!」なんて言われるから困る。

 

 

このブログを読んでも店の情報なんざ1mmも書かれてませんからね。

これを読む時間があるのなら、違う店を探す時間に当てた方がいいと思う。

 

そうだな、バーを探しているのならFIVE STARかドコデモドアに行った方が良いですよ。

 

 

 

さて、パンダのうんこはいい匂い、の感想を。

 

 

 

 

僕はどこかで、テレビに出ている人は完璧な超人なんだろうと思っている節があるのだけど、この本を読んでその認識は吹っ飛んでいった。

 

藤岡みなみ(ちなみに僕と同い年なのよね)は間違いなく僕と同じ不完全な人間で、それもかなりポンコツな部類にいる人だった。

 

接客が嫌いなのに接客のバイトをやってしまうし、なんとなくだけで児童館主催のキャンプに児童の引率をやって散々な目にあってしまう。

 

完成されたコミュニティに飛び込むのが苦手なのに国際交流パーティーに行こうとするも入口から漏れる賑やかさに怖くなって帰ったり、忍術教室に行ってはもじもじしたりする。

 

ラジオ局の電話番のバイトをしたらしたで電話に出るのが怖くなって職務放棄して怒られたりする。

 

英語もできないのにアメリカ人の留学生と友達になってコミュニケーションがうまくとれない微妙な距離感ですごすことになったり、ラスベガスのレストランでは生ハムを6皿も頼んでしまう。

 

 

3月に滝行に行ったら、滝に入る前に寒すぎて「帰りたい!」と思ったりもする。

 

 

 

ポンコツだ、ポンコツすぎる。

 

羅列するとダメ人間にしか思えないけど、失敗を隠さない藤岡みなみの人間性が全面に出ていてとても素敵だ。

 

このエッセイ集には「人間って、結局こんなものだよね」という、本来であれば他人に隠したくなるような話が集まっている。

 

 

ただ、藤岡みなみ自身が持つ優しさが文章からにじみ出ていて、失敗談すらキラキラとした思い出に昇華している。

 

読んでいて、自分を認めて他者を理解する必要性を確かめられる。

 

 

よく「やらない後悔よりやる後悔」なんて言われたりするけど、結局のところ「やる後悔」というのは世界を知ろうとして行動した結果だから美しいのだと思う。

 

それでいくと、藤岡みなみは誰よりも世界(曰く、異文化)とぶつかり続けているのかもしれない。

 

 

 

藤岡みなみは友達と映画を作った。

それをたくさんの人に見てもらいたいと思い、視覚障害者や聴覚障害者でも楽しめる上映を目指して映像バリアフリーガイドの養成講座を受講する。

 

藤岡みなみが受講したのは視覚障害者へのアプローチの方で、映像を言葉で伝えるというものだった。

 

その章『言葉で照らす』の中で「言葉は光だ」という一文が登場する。

これにはまさしく同意だ。

 

 

包み隠さずに書くと、いま僕は妻の実家に住んでいて、同居している義両親はともに聴覚障害者だ。

 

同居するにあたって、僕も最低限の手話の勉強をしている。

といってもNHKのみんなの手話を録画して、気が向いたら見ている程度だけど。

 

僕の手話のレベルは到底自慢できるものでもなく、ボディランゲージの枠を足の小指一本分くらいはみ出した程度だけど(謙遜でもなんでもなく、本当にそんなレベルなのよね)、それでも日常の生活で少しは役に立っている。

 

この話をお客さんにすると「すごいね」「偉いね」「大変だね」なんて言われることが多いけど、まったくそんなことはなく、ただ生活するのに少しでも手話を知っていた方が楽しいという理由でしかない。

 

 

藤岡みなみの表現を借りると、手話は僕と義両親との間を照らす光だ。

 

 

人間が複数人いるのに会話ができないというのは闇の中にいるのと同じだと思う。

 

手話はその闇を照らして、僕と義両親とに存在する世界の輪郭を伝えてくれる。

 

 

 

それは当たり前に存在することなので努力とは思っていない。

 

 

 

藤岡みなみ自身も、映像バリアフリーガイドを行うにあたって一言も「できてよかった」「努力した」「すべてがこうあるべき」などの言葉を書いていない。

藤岡みなみ自身が異文化への挑戦が必要だと思ったからそうしただけなのであろう。

 

この章はあくまで報告なのだと受け止めた。

 

 

 

 

読んでいて笑った話も多くある。

 

特に印象深いのは先にも書いたがキャンプの引率の話だ。

 

 

炊事用の火を起こすにもうまくいかない。すったもんだで小さな火を手に入れたが、今度は薪がない。引率している子供はまったく手伝ってくれない。

 

どうするか。

 

持ってきていた宮沢賢治の文庫本のページを破って燃やしたのである。

 

「追い賢治で焚きつける」というのには声を出して笑ってしまった。

 

 

文字通りの焚書である。

 

本を燃やすという行為は僕にはできそうにもない。

恐らく藤岡みなみにとっても苦渋の決断だったのであろう。

まさか愛する本を燃やす時がここなのかと思うと、いっそ賢治の炎を食べたくなっただろう。

 

 

見ず知らずの子供のために本を燃やす藤岡みなみの姿を想像して笑った。

不本意だっただろう。

大いに笑った。他人の不本意は面白い。

 

 

 

この本のあとがきの、最後の最後はこう締めくくられている。

 

「出会っていたら親友だったかもしれない誰かに、愛を込めて」

 

 

 

 

 

無数の世界に飛び込み、失敗し、愛すべき経験をし、そして今もなお出会っていない人に愛を込めることができる藤岡みなみに対して愛を込めて。

 

もしもどこかで出会ったらよろしくお願いいたします。

 

 

パンダのうんこはいい匂い、おすすめです。

 

 

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