妄想誕生日

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妄想誕生日

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2023/01/10 妄想誕生日

携帯が鳴る音で目を覚ました。

画面を確認すると、西脇からだった。

 

通話をタップすると、耳に当てる間もなく「誕生日おめでとう!!!」と甲高い声が脳みそに直撃してきた。

 

「いや、うん、寝てたから」

 

「誕生日おめでとう!!!」

 

「聞こえていたよ、ありがとう」

 

「仕事始めがんばってね」

 

こちらの返事を待つこともなく電話は切れた。

 

 

 

 

出社し、「あけましておめでとうございます」を連呼していると後輩が近寄ってきた。

 

「小林さん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。そして誕生日おめでとうございます!」

 

彼女は胸まである髪を光らせながら上目遣いで挨拶してきた。

 

「こちらこそ今年もよろしくお願いします。そしてありがとう」

 

「小林さん、今日って何時に終わる予定なんですか?」

 

「今日は挨拶回りくらいだから、定時過ぎには終わるんじゃないかな。なにかあった?」

 

「ほら、誕生日じゃないですか、誕生日のご飯は一人で食べたら寂しいですから私が付き合ってあげますよ」

 

意地悪な顔にえくぼが浮かんでいる。

 

「なにもわざわざ村雨とご飯行かなくても、誘えば誰かしらは捕まるよ」

 

「…だったら私と行きましょう。お店は後で連絡します!」

 

 

村雨はそういうと違う同僚のもとへと行った。全身から愛嬌をまき散らしながら。

 

 

 

朝礼を終え、仕事をしているとメールが届いた。

本田先輩からだった。

 

 

「誕生日おめでとう。

 

昼、予定がないなら一緒にどう?」

 

 

斜め前に座る先輩は何事もないようにパソコンの画面を見つめている。

僕の視線に気づいたようで、目が合う。

 

先輩は一瞬だけ少女のように笑って見せ、すぐにまた真面目な顔でパソコンに視線を戻した。

 

 

 

 

昼休み、スープカレー屋に行った。

 

「改めて誕生日おめでとう!これ、プレゼント!」

 

普段は誰が見ても美人なのに、笑うと顔が崩れるのはなんでなんだろうと思う。

 

「ありがとうございます!」

 

「ほら、あれでしょ?夜は村雨とご飯行くんでしょ?彼女、かわいいよねぇ。小林君のタイプじゃないの?」

 

「そんなことはないですけどね」

 

「だから、プレゼントは夜に渡そうかと思っていたけど、いまにしたの」

 

「いや、村雨は、まぁ、勝手に懐いているだけですよ。ご飯だって何回も行ってますし」

 

「かわいそうに。あの子、小林君と話す時だけ表情違うよ。今日もいつもとは服装がちょっと違うし」

 

「そうですかね。確かに村雨はかわいいですけども」

 

「まぁ私とはまた、そうだな、金曜日くらいにでもご飯行ってくれればいいよ」

 

 

―――

 

 

という妄想とともに14日で34歳になってしまいました。

 

西脇はperfumeのあ~ちゃんですよ。

 

 

本田翼だけは妄想の中ではいつまで経っても先輩なのです。

 

現実の誕生日は、前日に食べたカニに当たってしまって体力の限界の中での営業になりました。

 

 

妻も同じ症状になりまして、翌日には夫婦仲良く並んで点滴を打ちました。

 

 

 

みなさまも正月の残り物にはご用心を!

 

 

 

そんな感じで、本年もペダルバルをよろしくお願いいたします。

 

 

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