090-1642-6920
〒003-0024 北海道札幌市白石区本郷通8丁目南2-8 2階
営業時間 / 19:00~26:00 定休日 / 日曜・月曜
妄想ご来店
「髪、短くしたんですね」
「あれ、前にあった時はどれくらいの長さだったっけ」
「胸くらいまででした」
髪は2か月前に切ったそうだ。
半年ぶりに先輩からの誘いがあったので僕は仕事を切り上げて駆け付けたのに、
先輩にとっての僕はいつに会ったかも気にしない程度の存在だった。
先輩はビールを僕以上のペースで飲んでいる。
あぁ、この大きな一口が男前で、僕はこの人と仲良くなりたいと願ったのだと思い出した。
「学生の頃の長さですね、かわいいですよ、相変わらず」
「あら、ありがとう。そうか、学生以来か。7年ぶりか」
先輩は顎の線で切りそろえられた髪の毛先を触っている。
店員を呼んで料理を3,4品頼むと、先輩は「さすが、ナイスチョイスだねぇ」と
頷きつつ自分のビールを追加した。
髪の長さが戻ったからか、先輩は若返ったようにみえる。
鼻筋が通って、鋭いが大きい目がともすれば三白眼のようにもなってしまうところに、
短いボブの髪型が一層のこと先輩を美少年のように一層引き立たせていた。
もうすぐ30歳になるのに、年齢を重ねている様子がない。
それはこの居酒屋のオレンジに似た色の照明のおかげなのか。
先輩に少しでも年相応の変化を探すことができるのであれば、
僕のお腹に巻き付いて離れない肉にも言い訳ができそうな気がする。
ただしかし僕には、先輩の顔と向き合う度胸はなかった。
「そういえばさ、彼女はどうしたの?」
「前に先輩に会ったすぐ後に別れましたね」
「それはまさか私と浮気したと勘違いされて!」
「いや、それはないですね」
「あ、そう。悪い女になってみたかったな」
先輩は刺身をつまみながらビールをまた飲みほした。
「先輩こそ彼氏はいないんですか?」
「私は、ほら、このかわいさだからさ、男どもが陰で争う様子を楽しんでいるんだよ」
「それはつまりまったくアプローチがないということですね」
「いや、私はモテている、はずだと思っている」
「確かに先輩はかわいいですから」
「ありがとう、でも君くらいだよ、そう言い続けてくれるのは」
「その『君』って呼ぶのやめてもらえませんかね」
「じゃぁ君だって『先輩』と呼ぶのをやめて欲しいよ。
もう30歳も近くなれば、2歳の差なんて誤差だよ」
そう言い残して先輩はトイレに向かった。
お互いの呼び方はお互いの心理的な距離を表している。
僕にとっての先輩は、例えるなら枯山水の白砂利のようで、僕ではない他人によって作り上げられた美だ。
僕がもしその一つの石ころでさえ無為に触ってしまえば、その瞬間に美は崩壊し俗世のありふれた庭に成り下がってしまう。
たしか三島由紀夫の『金閣寺』でも主人公は金閣に対して同じような感情をいだいていたな。
先輩のグラスの結露を見つめながら思った。
「あと一軒行きたいんだけど、どう?」
先輩が個室の扉を開けるなり言った。
「たまに行くところがあって、そこで締めたいなって」
「いいですよ、もう行きますか?」
「そうだね、すぐ行こう」
先輩は座らずに、ジャケットとカバンを手にする。
僕も慌てて立ち上り、伝票をつかんだ。
「次の店だけど、階段が急で、降りるときに大変だからあまり飲みすぎないようにね。
そして、そうだ、そこにいるときだけ、君のことを名前で呼んであげる。だから君も私のことを先輩ってよばないでね。んじゃここはごちそうさま!」
そういって先輩は店員に愛想を振りまきつつ外に出てしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こんな感じで来る人いねぇかなぁ。
いねぇよなぁー。
きゅんきゅんするぜ。
先輩はもちろん本田翼。
そんな素敵な組み合わせが来ることを信じつつ、今日も働きます。
長々お付き合いありがとうございました。
◆◇————————————————————◇◆ ペダルバル 電話番号:090-1642-6920 〒003-0024 北海道札幌市白石区本郷通8丁目南2-8 2階 営業時間 / 19:00~26:00 定休日 / 日曜・月曜 ◆◇————————————————————◇◆
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24/06/26
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「髪、短くしたんですね」
「あれ、前にあった時はどれくらいの長さだったっけ」
「胸くらいまででした」
髪は2か月前に切ったそうだ。
半年ぶりに先輩からの誘いがあったので僕は仕事を切り上げて駆け付けたのに、
先輩にとっての僕はいつに会ったかも気にしない程度の存在だった。
先輩はビールを僕以上のペースで飲んでいる。
あぁ、この大きな一口が男前で、僕はこの人と仲良くなりたいと願ったのだと思い出した。
「学生の頃の長さですね、かわいいですよ、相変わらず」
「あら、ありがとう。そうか、学生以来か。7年ぶりか」
先輩は顎の線で切りそろえられた髪の毛先を触っている。
店員を呼んで料理を3,4品頼むと、先輩は「さすが、ナイスチョイスだねぇ」と
頷きつつ自分のビールを追加した。
髪の長さが戻ったからか、先輩は若返ったようにみえる。
鼻筋が通って、鋭いが大きい目がともすれば三白眼のようにもなってしまうところに、
短いボブの髪型が一層のこと先輩を美少年のように一層引き立たせていた。
もうすぐ30歳になるのに、年齢を重ねている様子がない。
それはこの居酒屋のオレンジに似た色の照明のおかげなのか。
先輩に少しでも年相応の変化を探すことができるのであれば、
僕のお腹に巻き付いて離れない肉にも言い訳ができそうな気がする。
ただしかし僕には、先輩の顔と向き合う度胸はなかった。
「そういえばさ、彼女はどうしたの?」
「前に先輩に会ったすぐ後に別れましたね」
「それはまさか私と浮気したと勘違いされて!」
「いや、それはないですね」
「あ、そう。悪い女になってみたかったな」
先輩は刺身をつまみながらビールをまた飲みほした。
「先輩こそ彼氏はいないんですか?」
「私は、ほら、このかわいさだからさ、男どもが陰で争う様子を楽しんでいるんだよ」
「それはつまりまったくアプローチがないということですね」
「いや、私はモテている、はずだと思っている」
「確かに先輩はかわいいですから」
「ありがとう、でも君くらいだよ、そう言い続けてくれるのは」
「その『君』って呼ぶのやめてもらえませんかね」
「じゃぁ君だって『先輩』と呼ぶのをやめて欲しいよ。
もう30歳も近くなれば、2歳の差なんて誤差だよ」
そう言い残して先輩はトイレに向かった。
お互いの呼び方はお互いの心理的な距離を表している。
僕にとっての先輩は、例えるなら枯山水の白砂利のようで、僕ではない他人によって作り上げられた美だ。
僕がもしその一つの石ころでさえ無為に触ってしまえば、その瞬間に美は崩壊し俗世のありふれた庭に成り下がってしまう。
たしか三島由紀夫の『金閣寺』でも主人公は金閣に対して同じような感情をいだいていたな。
先輩のグラスの結露を見つめながら思った。
「あと一軒行きたいんだけど、どう?」
先輩が個室の扉を開けるなり言った。
「たまに行くところがあって、そこで締めたいなって」
「いいですよ、もう行きますか?」
「そうだね、すぐ行こう」
先輩は座らずに、ジャケットとカバンを手にする。
僕も慌てて立ち上り、伝票をつかんだ。
「次の店だけど、階段が急で、降りるときに大変だからあまり飲みすぎないようにね。
そして、そうだ、そこにいるときだけ、君のことを名前で呼んであげる。だから君も私のことを先輩ってよばないでね。んじゃここはごちそうさま!」
そういって先輩は店員に愛想を振りまきつつ外に出てしまった。
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こんな感じで来る人いねぇかなぁ。
いねぇよなぁー。
きゅんきゅんするぜ。
先輩はもちろん本田翼。
そんな素敵な組み合わせが来ることを信じつつ、今日も働きます。
長々お付き合いありがとうございました。
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ペダルバル
電話番号:090-1642-6920
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